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理事長対談|ご案内

※平成17年9月18日付大分合同新聞朝刊掲載

地域で役に立つSSに

大分県石油商業組合・西謙二理事長に聞く

 予断を許さない、変動の時代を迎えている石油業界。その中で、大分県石油商業組合は、地域におけるガソリンスタンドの役割を模索し、さまざまな社会貢献活動を展開している。県石油商業組合の西謙二理事長に、地域貢献活動や業界の現状について聞いた。聞き手は森哲也大分合同新聞社取締役編集局長。

西謙二理事長写真

 西謙二(にし・けんじ) 大分県石油商業組合理事長。大分県石油販売協同組合理事長。(株)西石油代表取締役社長。県ニュージーランド(NZ)友好協会会長、別府つるりん通り商店街振興組合理事長など多数の肩書を持つ。ニュージーランド・ロトルア市名誉市民の称号を授与されている。別府、大分両市に11カ所のスタンドを展開。日本大学卒。昭和24年別府市生まれ。

県石油商業組合のシンボルキャラクター「まもっち」
「やさしさ・勇気・元気」をイメージしている。

安全・安心のための社会貢献活動を 防犯・交通安全・防災をテーマに展開

安定供給第一に

 森 原油価格の上昇などで、ガソリン価格に対する消費者の関心が高まっています。業界の受け止め方、今後の見通しについてどのようにお考えですか。

  西 石油を取り巻く状況は、世界の経済情勢によって毎日のように変動しています。われわれにとっても先行きは不透明。需給バランスを崩さず、昔の石油危機のようなパニックを起こさないよう石油を安定供給することが、われわれの一番の使命だと思います。

  森 業界を取り巻く厳しい状況の中、県石油商業組合は、地域貢献活動に力を入れていますね。

  西 組合員のガソリンスタンドでは、石油の安定供給を第一に、地域に愛されるガソリンスタンドづくりを進め、行動する組合を合言葉に頑張っています。その一環として、地域社会に密着したさまざまな社会貢献活動を行っています。これまでも、『一番大切なものが身近にある』をテーマに「ふる里のこし事業」を実施してきました。古里の懐かしい音を収録した「おおいた音アルバム」や、当時の県内58市町村それぞれの環境自慢を1冊にまとめた「ふる里のこし絵本」は、多くの人に好評をいただいています。また、県内58市町村の花やシンボルの生き物を紹介した下敷きを、県内の全小学校の児童に配布しました。

  森 地域の防犯活動にも積極的に取り組んでいますね。

  西 安全で暮らしやすい街づくりに貢献するため、平成11年度から『困ったときはいつでもおいで』を合言葉に「こども連絡所」を中心とした社会貢献活動を展開しています。現在は、女性や高齢者の保護、安全確保も視野に入れて活動しています。子どもや高齢者が助けを求めてスタンドを訪ねて来た時、どう対応するかを示した従業員向け「こども連絡所対応マニュアル」を作ったり、応急手当てや心肺蘇生方法の基礎知識を学習する救命講習会を実施するなど、従業員研修の強化も進めています。

  森 地域のお役に立つスタンドづくり、地域で必要とされるスタンドになる。そういう取り組みをする中で、従業員の意識も変わり、地域の皆さまとの触れ合いも深まるのではないでしょうか。

  西 近年の車は性能が良く、故障も少なく、道も整備されているので、ドライバー自身がトラブルに対応する機会が少なくなっています。例えば、簡単な作業で言えば、タイヤがパンクした時、工具はどこにあるのか、どうやってタイヤ交換をするのか分からずに、パニックを起こしています。特に女性や高齢者に多いようです。そういう事態のサポートもできるようなSS(サービスステーション)を目指したいですね。接客面でのレベルアップのための講習会も開きたい。業界で働いている従業員のレベルを少しでも上げていきたいと思っています。

  森 地域の幹線道路沿いにあるガソリンスタンドが、地域の安全・安心のためにさまざまな社会貢献活動に取り組んでいるのですね。

  西 ガソリンスタンドが地域に役立ち、地域になくてはならない存在であり続けるためには、スタンドにしかできない、地域における役割を模索して実行していくことが大事です。少しでも社会に役立つようなSSづくりをしようというのが、組合員一同の考えです。

地震の避難場所

 森 今年度はどんな地域貢献活動を計画していますか。

  西 今年度も引き続き、「地域の安全・安心のステーション」として、防犯・交通安全・防災の3つをテーマにした事業を展開します。

  森 具体的にはどんなことを。

  西 防犯については子ども、女性、お年寄りを犯罪から守り、もしもの場合の緊急避難場所としての役割を果たす「こども連絡所」への取り組みを継続します。店頭では、薄暮時の早めのヘッドライト点灯を促す声かけ運動などの啓発活動を行います。

  森 防災については?

  西 このところ地震が頻発しています。ガソリンスタンドは日本の消防法による厳しいルールに基づいて、地震や火災に強い構造になっています。震災時には、ガソリンスタンドが一時的な避難場所にもなり得るということを、積極的にアピールしていきます。今年はこの防犯・交通安全・防災の3つの地域貢献テーマを1つの事業としてイメージ付けるために、シンボルキャラクターをつくりました。

  森 親しみのあるキャラクターですね。子どもから女性、お年寄りまで、幅広い層に受け入れられそうです。

  西 デザインのテーマは「やさしさ・勇気・元気」。安全と安心、ふるさと大分を愛し、見守る、シンボルキャラクターです。

全小学生に配布

 森 小学生に対しては、どのような活動を行っていますか。

  西 これまでは、交通ルールを記した交通安全下敷きを配布したりしてきました。今年度は、ガソリンスタンドが「こども連絡所」であることをもっと知ってもらうため、クリアフォルダーを制作しています。県教育委員会を通じ、県内の全小学生に配布します。子どもたちが積極的に大分県石油商業組合のホームページにアクセスできるよう、ゲーム感覚のコンテンツもあります。ぜひアクセスしてください。また、防犯・交通安全・防災への啓発を行うため、具体的な対処方法を載せた「こどもあんしんガイドブック」も制作します。これも県教育委員会を通じて県内の全小学校にクラス単位で配備する予定です。

 森 最近、県内ではガソリンスタンドの閉鎖が目立ちます。スタンド経営も厳しくなっているようですが…。

  西 平成8年の規制緩和以降、経営状態が様変わりしました。以前は800店近くあった県内のガソリンスタンドが、この10年間で約200店も減りました。全国でも1万カ所が閉鎖しています。特に郡部のガソリンスタンドでは、採算が取れないことや、後継者がいないなどを理由に閉鎖が目立って増えています。ガソリンスタンドは消費者にとって必要なもの。地域に密着したスタンドが無くなるのは残念なことです。最近は代替エネルギーなどの話が出ていますが、コスト面からも実用化はまだまだ難しい。限りある資源ですが、石油ほど使いやすい、効率の良いものはありません。今後はわれわれ供給側が、自動車メーカーと一体となってエネルギーの新たな方向性を見いだしていく必要があります。

  森 地域や自動車メーカーと一体化することが、これからのガソリンスタンドの生き残る道のようですね。地域におけるガソリンスタンドの役割は重要です。過疎地のスタンドをできるだけ確保していくためにも、消費者の理解を得ながら、「地域でお役に立つスタンドづくり」にいっそう努めていってほしいと思います。